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  • 執筆者の写真伊﨑 一夫

No.1【2017-12月】「私、失敗しないので」

 2017秋ドラマ「ドクターX 第5シリーズ-外科医・大門未知子」が、2017年12月に終了しました。医療ドラマの中ではかなりコメディ色が強く、そのリアルさとリアリティの差に驚くことも多くありますが、素朴に楽しめるドラマでしょう。最終回第10話(2017年12月14日放送)の視聴率は、25.3%でした。

 「絶対に失敗しない」フリーランス外科医・大門未知子が、派遣先の大学病院の覇権争いに巻き込まれつつ、見事な手術で次々に患者を救っていくという痛快なストーリーは、まさに現代版・水戸黄門です。その「マンネリ展開さ」こそが人気を支えているともいえます。

 今回は、毎回飛び出す“名台詞”「私、失敗しないので」に注目します。

 この「私、失敗しないので」は、外科医が実際には絶対に言わない台詞だそうです。手術の「成功」や「失敗」は簡単には説明できず、ほとんどの手術は術前に予定していた通りに行われるので、外科医の術後の台詞は「手術は予定通り終わりました」になります。

 日常生活でも「私、失敗しないので」と言い切りたい気持ちはありますが、実際には「私、失敗しないと思うので」「私、失敗しないつもりなので」あたりが限度でしょうか。

 さらに私たちの仕事では、「私、失敗するかもしれないので」や「私、失敗しないようにするから」の方が多くなりそうです。採用試験や研究授業をイメージすると、「失敗すること」に対する不安は大きくなります。しかし不安を和らげ、失敗や挫折を前向きなものに変えるものの見方や考え方を身に付けておくことは大切なことです。アドラー心理学が指摘する「失敗は成功の一部」だとする考え方です。

 また、「ドクターX」では、西田敏行、遠藤憲一、吉田鋼太郎などの豪華な悪役たちが勢ぞろいしています。渋すぎるキャスト陣の中にいるからこそ、主演・大門未知子と、その相棒のような存在である麻酔科医・城之内博美の華やかさが際立ちます。自分なりの目標に向かうとき、仲間と共に頑張ったり、夢を語り合っている経験を楽しめるようになりたいものです。チャレンジそのものを評価し合える仲間と、「失敗は良いこと」「完璧そうに見える人もみんな失敗を重ねて成功に到達していること」を共有したいものです。

 そこから「失敗してもいい経験をした」と思い、自分を勇気づけることもできます。そういうとき、「私、失敗しないので」と自分に言い聞かせることは役立ちそうです。なかなか言い切ることは難しいですが、「私、失敗しないので」と心の中で言ってみませんか。

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