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  • 執筆者の写真伊﨑 一夫

No.2【2018-03月】チャンスの神様は誰にでも……−IKKOの「どんだけ〜」の誕生秘話−

更新日:2020年9月18日

 平成30年1月23日放送の『チマタの噺』(テレビ東京系)での、タレントのIKKO(56)が語った「どんだけ〜」の誕生秘話は興味深かった。「どんだけ〜」は、IKKOの代名詞ともいえるフレーズ、2007年の流行語大賞にもノミネートされた。関西にある大学の国文科の授業でとりあげられたり(2009年、2010年)、教材に掲載されたりしたそうである。

 IKKOは、本名である豊田一幸の音読みに由来する。職業として「ヘアメイクアーティスト」「メイクアップアーティスト」「ビューティーディレクション」「タレント」「書家」が挙げられる。50歳になる年から、書道を本格的に教わるために書家の金敷駸房(かなしき しんぼう)に師事し、雅冬炎(みやび とうえん)の雅号で数々の書道展で賞を受賞するなど本格的である。多くの肩書きは、IKKOのエネルギッシュな活動を示している。

 さて番組によると、「どんだけ〜」はIKKOがテレビに出始めた頃に誕生したという。「(他のタレントに)ツッコまれて、いつも笑ってばっかりじゃいけない」と苦悩していたIKKOに、美容室の知人が、新宿二丁目ではやっていた「“どんだけ〜”を言えばいいんじゃないですか?」とアドバイスしてくれたそうだ。(新宿二丁目は、ゲイバー「プラチナ」の代名詞であり、「どんだけ〜」は、元々「やすこママ」の口癖だったが、それをIKKOがメジャー化させたということらしい。)

 “どんだけ〜”が頭に残っていたIKKOは、ダウンタウンの浜田雅功にツッコまれた際、とっさに「どんだけ〜」とリアクションした。そのとき、緊張のあまり手が震えていたことで、偶然人差し指を揺らす独特のポーズが生まれ、そこから「どんだけ〜」がIKKOのものとして定着してしまったと語っていた。

 さらにIKKOは、明石家さんまの番組で「まぼろし〜」というフレーズ、とんねるずの番組で「背負い投げ〜」というフレーズが生まれたことを告白していた。

 これに対して『チマタの噺』のMCの鶴瓶が、「ダウンタウンとか、とんねるずとか、そういうところから生まれてるんやな」「(IKKOは)お笑いによって育てられてるんやな」と、しきりに感心していたのが印象的だった。

 IKKOの「どんだけ〜」の誕生は偶然である。しかしその後、明石家さんまやとんねるずといった大物タレントによって愛され、育てられていったいうところが興味深い。「どんだけ〜」が、「まぼろし〜」や「背負い投げ〜」と転化できる素材であることも面白い。

 アイデアや着想が偶発的であることはよくあることだ。しかしIKKOが苦悩していたからこそ、「どんだけ〜」はIKKOのところに降ってきてくれた。いわゆる「チャンスの神様」である。「チャンスの神様は前髪しかない」という〈あの神様〉である。「チャンスの神様は突然現れ、物凄いスピードで走り抜ける上に前髪しかないから過ぎ去った後に掴もうとしてももう掴めない。だから、チャンスの神様が来た!と思ったら、しっかりと前で構えてキャッチしよう」という〈あの神様〉である。

 自信がなくても、時間がなくても、「何とかしたい」「挑戦したい」と強く願う人の前に「チャンスの神様」は現れる。「チャンスの神様」を引き寄せる、察知できる力があればラッキーだ。ラッキーな人は確実にいるだろう。しかし私たちは、そんな力を持っていない。だからたえず願うことしかできない。苦悩とまではいかなくても、強い願いを本気で持っておきたいと思う。

 さらに、IKKOの「どんだけ〜」は多くの先輩たちによって育てられている。IKKOが愛される存在だからこそである。私たちは一人では生きていけない。多くの人の支えが必要だ。お互いに人々によって生かされている。IKKOの「どんだけ〜」誕生秘話、そして成長の道筋は、そのレベルや質に違いがあったとしても、実は誰にでも実現可能なモデルだろう。「チャンスの神様」は必ず現れる。

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